太鼓盤開発
 
某社の取材記事をベースに、「太鼓盤開発秘話」をご紹介致します。」

全国津々浦々、祭りのあるところには太鼓ありの近年は、それに輪を
かけて町おこし村おこしにも○○太鼓などといって、新しい和太鼓音楽
が洋楽世代の若者達にも広く受け入れられ、新しい展開を見せています。
ブームとなった太鼓ゲームだけでは飽き足らず、本格的に和太鼓を始め
た人もいます。

ところがこの和太鼓、いざ練習となると場所は取るし、音は大きいし、
なかなか手軽に練習できるものではありません。家の中で、漫画本や電
話帳を使って叩く人もいますが、ポコポコ音(おと)は響くし、すぐに
ボロボロになってしまいます。それに物足りなさは否めません。練習場
でも太鼓の数に限りがあるので順番待ちの間、タイヤを叩いて練習した
りしますが、タイヤも重たいので、出し入れも大変です。

そこで今回紹介するのは、どこにでも簡単に持ち運べ、場所を選ばず
練習ができる和太鼓練習台その名も「太鼓盤(たいこばん)」です。考
案者は現在、青森市在住の打楽器奏者で和太鼓の指導、育成にも力を注

いでいる黒坂昇(くろさかのぼる)さん。お弟子さんに家でも迷惑をか
けずに周りを気にしないで音が出せるように、毎日練習をして欲しいと
の願いから自ら試作品に取り組み、板をくりぬき、布やスポンジを張り
合わせたり、ニスを塗ったりと、試行錯誤を繰り返し2年かけてようや
く完成させました。

太鼓盤はケヤキの木目合板でできており、袋や手提げバッグにA4サ
イズの楽譜などと一緒に収められるように、直径27センチ、厚さ3セ
ンチの大きさに仕上げました。重さはたったの800グラム。中央の打
面(だめん)には直径20センチの黒い生ゴムを張って本物の質感を出
しています。底面(ていめん)にはコルクを張り、叩いてもずれない工
夫も施しています。周りの鋲(びょう)は、28個すべて黒坂さんが手
作業ではめ込んでいます。価格は1万5百円。

この太鼓盤は、流通やマーケティングの専門家で構成された青森県の
財団法人21あおもり産業総合支援センターで、平成18年度事業可能
性評価事業で高い評価を受けました。

黒坂さんのお弟子さんには、アメリカやカナダ、オーストラリア、イ
タリアなど、外国人の国際交流員もいます。その人たちや、友人のロサ
ンゼルスで活躍する
UCLA和太鼓チームメンバーからも注文がありました。
任期を終えて帰国する際も大事に持ち帰って練習を続けると話しています。

タブラを奏でるために、バネを利用した指先強化マシーンを作ったり、
中国のおもちゃの木魚を並べて打楽器にしたりする黒坂さん。演奏家なの
に、なぜそれほどまでに物作りに情熱を傾けるのか、そこにはものがない
時代に育ったから自分でなんか工夫し、よりよく効果的に演奏できないか
と追及してきた黒坂さんの思いが根底にあるようです。

「持ち運びに便利な和太鼓練習台「太鼓盤たいこばん」」
〈取材中〉
「こんな感じなんです・・・」 実演中
黒坂昇が指導する「青森太鼓組」
太鼓盤と太鼓を使った練習風景

外国人のメンバーも和太鼓に挑戦です。
木魚を並べた手づくり楽器。
こんな所にもアイディアが・・・・
こんな風に持ち運びもラクなんです。
日本の伝統文化でもある「和太鼓」 
国内だけでも数多くのチームや奏者が存在し、今や世界中に和太鼓ブームが起きていると言っても過言ではありません。
それは何故なのでしょうか?
太鼓を打ったことがある人ならわかるはずです。そこには人間の「鼓動」があり、それが自ずと魂に響くからではないでしょうか。
しかし、実際にチームを作り、練習するとなるとこれほど制限が大きい楽器もありません。
太鼓は高価なので、メンバー分の数が揃えられない、音が大きいので練習場所や時間が制限される。
打楽器のプロである黒坂昇は演奏面でも指導面でも長い間、その問題に直面してきました。
口唱和や膝をたたいてリズムを覚えさせることは出来ますが、実際に「打つ」感覚をつかむための練習台。
どこを捜してもそんなものはありません。「それなら作ってみよう!」
最初に回ったのは100円ショップ。バチを傷めず音がしないようなもの・・・・ 
選んだのはテーブルまな板として売っていた丸い板とコルクの鍋敷き、赤ちゃん用品として売っていた「衝撃吸収マット」でした。

それを組み合わせて作った試作品がこれ。

  ところが、マットの部分がすぐにへたってきてしまう、軽く打っているつもりでもぽこぽこと台が弾んでしまう。逆にコルクの面を打って、底にゴム製の「滑り止め」を貼ってみたりしたが打面がしっくりこないし、やはり本体そのものに重量がないので打っていると逃げて行ってしまう。
まぁ、100円ショップの材料だからそれは仕方ない。そこで今度はホームセンターに行き材料を物色する。
  目に止まったのは黒い「生ゴム」 打面はやっぱりこれしかないのではないだろうか?
底面は目の細かいコルクがいいようだ。弾んだり、動いたりしないようにするためにはやっぱり本体そのものにある程度の重量が必要なのでは? 板に貼るだけではなく、「繰り抜く」必要があるのでは・・・?















「本格的に取り組んでみよう」試作品を完成させたその頃からそう考え始めたのでした。
早速、知り合いの木工業者を尋ね相談するが「円形に繰り抜く」という作業が技術的にも大変難しく その分コストもかかってしまうとのこと。
その後、何度も木工業者との相談を重ね、材料を揃え、出来上がるまでに一年以上、更に特許庁に申請するにあたり時間を要し、発案から販売までに2年以上がかかった。
しかし、それだけの時間と技術と工夫を費やしてものの出来が悪いわけがない。同じような悩みを持つ太鼓グループに紹介すると、最初はいぶかしげに見るものの、実際に打ってみるとクオリティの高さに誰もが驚きます。口をそろえて「これはいい!!こんなものが欲しかったんだよなぁ」と、言ってくださいます。
これからも多くの皆さんにこの「太鼓盤」を体験していただき、良さを実感していただければと思います。
そしてそれが「和太鼓」の普及に繋がる事を願っています。



最初の試作品は100円ショップで材料調達
ホームセンターで揃えた材料で製作開始。普段から思いつきで独自の楽器や練習道具を作ってしまう器用さで、今回も試行錯誤しながらもどうにか完成。それが、これ。


なるべく円形に、「繰り抜く」というよりは「削り取った」と言った方がいいでしょう。打面はまだゴムではなく、衝撃吸収マット。板に直接コルクが張り付きにくいのと、打面のショックを吸収する目的でダンボールをはさんでいる。鋲の数も大サービス、という状態。
それでもキレイにニスを塗って仕上げてある。稚拙ながらも性能的には申し分ない。